50代のご夫婦とお嬢さんが暮す家の全面的なリフォーム(リノベーション)です。
この家は、約20年前、ご夫婦がある建築家に設計を依頼して建てました。
今回の工事にあたり最初にお話を伺った時、「この家を気に入ってる」と言われ
いろいろなお話の中で『この家に対する愛情』を感じました。
ただ・・・
『暮し』というのは「(設計した)当初の設定」どおりにはならず、20年経って、家のあちこちが『暮し』とあわなくなっていました。
この家の基本的な部分は尊重しつつ、家族3人がお互い独立し、暮しを楽しめる家に作り変えました。
▼玄関に入ります。
この家は半地下のある2階建です。
玄関は「階段室」の中にあります。
▼数段の階段を上り1階になります。1階から玄関をふりかえります。
白い部分が新しく作った下駄箱
▼工事前の玄関
▼1階はLDKです。
元々円形の部屋です。部屋の中の全てが円の中心に向かうデザインでしたが、「暮し」の変化には対応できなくなっていました。今回の工事で「円の中心に向かう」という規則性を壊しました。
▼工事前のリビング
▼写真奥が玄関のある階段室
▼キッチン
▼円形の部屋に対して、以前は流し台もカーブしていました。
今回の工事では直線の流し台にしました。円形の部屋に対して、直線を付けるので一部がどうしても欠けてしまいます。作り付のオーダーキッチンなら問題なく対応できます。
▼反対方向から
▼工事前のキッチン
▼流し台の後ろには作り付の収納があります。
冷蔵庫の置場、電子レンジなど機器の置場を含めて一番使いやすいように施主と相談しながら設計しました。
▼キッチン収納は、裏にも収納があります。
▼1階から階段室に出ます。
階段の途中から1階全体が見渡せます。
▼階段室見上げ
元々は全面ガラス屋根でした。ここだけでなく、2階の約半分はガラス屋根でした。
家としては環境的に大変な事だったはずですが、施主はどちらかという気に入ってました。それで、階段室の半分だけは、ガラス屋根を残しました。
2つ上下にある窓は、今回の工事で作りました。以前も窓はあったのですが、玄関ドアの延長として作られた木製ドアのような窓で、開け閉めが大変でほとんど使われなくなっていました。通風や換気のために重要な位置でしたので、普段使えるようにサッシに変えました。
▼工事前の階段見上げ
▼階段室見おろし
▼2階に上ってまず廊下があります。
右はクローゼット、左の壁は浴室、正面に個室があります。
▼工事前
2階は、すぐに寝室でした。寝室を通らないと、奥の部屋や、写真右側にある、洗面や浴室に行く事ができませんでした。
▼個室の入り口は引戸。それを開けると・・・
▼正面の個室に入ります。お嬢さんの部屋です。
正面の窓は、元々の窓の位置です。アルミサッシがありましたが古いので付け変えました。
元々この部屋はインナーテラスで、左隣に浴室があり、浴室と一体として使える場所でした。それ以降、一度リフォームされて個室のよう作り変えてはありましたが、暮しの変化にうまく対応できるまでにはなっていませんでした。
以前あった窓は、あまり外を意識できるものではありませんでしたが、新しくなった窓からは、庭の景色がとても良く見える事がわかりました。
▼工事前
以前1度リフォームした時に、部屋のように作り変えたそうです。
▼廊下方向
この部屋を出て廊下を右に進みます。
▼廊下
正面はトイレ、左の壁は浴室、奥に洗面脱衣、右に寝室があります。上部に小さなロフトがあります。
▼洗面脱衣
▼みなさん気に入ってくれる、実験用流しSK-7とシャワー水栓TKGG36E(TOTO)の組み合わせ。
▼正面は寝室。洗面脱衣と寝室の間の廊下の上にはトップライトを作りました。奥まった部分なので、「作ってよかった」と施主のYさんに言っていただき、安心しました。開閉できますのでこもりがちな熱や湿気も外に出す事ができます。
▼工事前
▼寝室
ここは以前浴室でした。ガラス屋根でとても開放的な気持ちいい風呂ではありました。お風呂好きなご主人にはとっては残念ですが、今回の工事で浴室を移動させ、寝室を快適な位置に確保しました。
隣の個室と同様に窓は新しいサッシに付け変えました。そして同じ様に窓からの眺めの良さに気が付きました。
▼工事前
▼廊下方向
次は廊下に出て左に向き、階段室にもどります。
▼廊下・・もとに戻ります。
上部はロフト、廊下の天井高は約1.8m
▼右に曲がり、階段室です。
このようにL字型の廊下によって、この2階にはいくつもの『視線の抜け』ができました。
それによって家の距離感を感じ、小さな面積でもそれを感じなくなります。そして、、、この家にある光を美しく感じる事ができるようになりました。
▼階段室天井見上げ
唯一残ったガラス屋根・・・室内環境には厳しいものではありますが、施主ご家族には、なくしてはならないものだったと思います。
空の青が気持ちよく、夕日の感動的な光に満たされ、家の中で月を見る事ができるのです。この家を設計した建築家が思い描いたものです。この家が出来上がってからずっと続いてきた「この家の時の流れ」は、これからも続きます。
今回の工事で、この家の中はかなり変わりました。問題だった、この家とご家族の暮しが合わなくなってしまった部分は、改善できたと思います。また、施主が「好き」と言ったこの家の原形はほぼ変わりません。家の根本の部分と新しい部分とがうまくまとめられたと思います。
新しくなったこの家を、すでに施主ご家族は楽しんでいらっしゃいます。とってもうれしい事です。
いつか・・「その後」をレポートしたいと思います。
【石神井の家(R) について】
施主のYさんとお会いしたのは、杉並の家(R)の見学会に来ていただいた時です。
その時はご主人だけだったのですが、その後奥様ともう一度見に来てくださるほど、感心を持っていただきました。
しばらくして、メールでご相談をいただき、お会いしてお話が始まりました。
施主Yさんの家は、築20年になる、半地下1階地上2階建の家です。
約20年前、ご夫婦の住む家としてある建築家が設計しました。
その後家族が増え、成長とともに、家とご家族の暮しが合わなくなっていて、リフォームを何度かされてはきていたのですが、その時々の「対処治療」的なものであったため、根本的な解決にいたらず、Yさんとしては「どうしようもない」状態になっていました。
Yさんの家は、建築家の強いコンセプトのある家で、簡単にリフォームできるものではありませんでした。
だからと言って、Yさんはこの家を「嫌」になっていたわけではなく、初期の状態を懐かしんだり、家のよいところを教えてくださったりと、家を「好き」でした。
設計の当初は、一部家の形状を変更する案も出したのですが、ご夫婦に「今の家の形が嫌なわけではなく、無理に変えなくてもいい」と言われたり、いろいろプランを考える中で、元の家の形の中でまとめるほうがうまくいく事がわかり、家の根本的な「芯」の部分には手をつけない事にしました。
逆に言うと、家が設計された時にうまく考えられていたという事かもしれません。
Yさんは工事が始まって、ひととおり解体されたご自分の家を見て「こうなってるんだ~」と楽しそうに現場に足を運ばれていらっしゃいました。家を建てた時は、お仕事が忙しく、ほとんど家のできあがる様子を見る事ができなかったそうです。そうゆう意味でも「2度目の家づくりかもしれません。
工事の初めから終わりまでをご覧になって「家は変われる」という事をしみじみと実感されたそうです。
家が変わった事で、それまで見えなかったものが見えるようになりました。元の家は、どちらかというと、家の中に意識が向かう家でした。ですから外を気にする事がなかったのかもしれません。
工事前の1階リビング。なんとなく円形の部屋の中心に意識が向くよう、全てものが作り付られていました。外周の壁に作りつけられた三角形のテーブルは、座っても正面の庭を見る事がなかったそうです。
今回の工事では、「中への意識」も残しつつ、「外へ」も意識が向かうようになったと思います。それは・・「窓から見える景色」が見えるようになったのです。Yさんの家の庭の木々、隣家の木に咲く花、遠くを走る電車、など、これまで見えてなかったものに気が付いたそうです。
家が変わって、Yさんは、いろいろ家の中で楽しんでいらっしゃるようで、先日、何枚も写真を送ってくださいました。
これからも、新しく生まれ変わった家で、これまでできなかった事を、思う存分やって、暮しを楽しんでください。
■ 建築概要
建築地 | :東京都練馬区 |
施主 | :夫婦+子(1人) |
構造規模 | :木造/地下1階地上2階建て |
1階床面積 | :33m2(9.9坪) |
2階床面積 | :37m2(11.2坪) |
施工 | :ミキホーム(幹建設) 担当:宮前博伸 |
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